奥の細道への旅の始まりは、街での幾つかの僥倖がきっかけになります。ふらっと街で映画を見た帰りに谷中七福神に立ち寄って見たことから始まります。
時代小説の楽しさに浸っている事もあって、居眠り磐音に出てくる谷中七福神を尋ねて見たのです。小説に出てくるこの寺の町で、多くの路地と懐かしい風景を目にしてすっかり魅入られてしまいました。少なくても昭和が色濃く残っています。
七福神のつながりで、次に訪れたのが藤沢周平の多くの物語の場所となっている川の町深川です。深川七福神は富岡八幡から始まり北へと向かいます。小名木川に近づくほどに私は興奮が抑えきれなくなりました。最も好む時代小説の地を歩いている事で、物語が、登場人物が立体的な姿として眼前に現れてきたからです。それは懐かしささえ感じてしまいます。
幾多の藤沢作品に登場する小名木川が隅田川と合流する場所に掛かる万年橋。幾つもの物語が頭に浮かんできて止まらなくなります。眼前には都会の大河・大川が、江戸時代もかくやと思える行きかう船の姿が更に感動を高めてくれます。
万年橋を渡って直ぐに私の目を引いたのが芭蕉稲荷、大川端の芭蕉像、句碑の数々。あちらこちら芭蕉の足跡が溢れているのです。今まで俳句に全く興味を抱いた事も無かった私には、300年以上たった芭蕉の事をこれほど守っている深川に大いに興味を抱きました。
この濃密に残る芭蕉の足跡、それが芭蕉の奥の細道への入口になります。このホーム・ページの始まりは深川七福神なのです。